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接客スペシャリストの思考

お客様がラーメン店で働いているので、試しに食べにいってきました。

そのお店はチェーン店で20席くらいあります。お客さんは10人ちょっといました。

私が入店すると彼はすぐに気づいて笑顔になって、元気良く「いらっしゃいませ」と挨拶した。

私はオーソドックスなラーメンを頼んでスマホをいじりながら待っていた。

彼のホールの仕事をしていた。

スマホをいじりながらも彼の声が耳に届く。

「お冷やのおかわりいかかですか?」

「大変お待たせしてすみません。チャーシュー麺と餃子です、以上でご注文のお品お揃いでしょうか?ごゆっくりお召し上がりください」

「ありがとうございます、味噌ラーメンで780円になります。1000円の頂戴いたしましたので、220円のお返しになります。こちら次回使えるクーポン券になりますのでよかったらどうぞ。またお待ちしております。ありがとうございました」

「いらっしゃいませ。お客様何名様でございますか?はい、こちらのお席でよろしいですか。どうぞこちらへ」

「ご注文の方繰り返させていただきます。ラーメン2つに、炒飯ひとつ、餃子ひとつに、生ビール3つでよろしかったでしょうか?はい、ありがとうございます、少々お待ち下さい、お飲み物すぐにお待ちいたします」

お客さんも入れ替わり立ち替わりで忙しそうだった。

彼は良く働いていた。キビキビと動いて、ハキハキと喋る。

私の注文したラーメンを彼が持ってきてくれた。

「お待たせしました。ラーメンです。熱いのでお気をつけてください」

「ありがとう。忙しくて大変だね」

「ありがたいです、ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」

と言って彼は、帰っていった席の片付けをテキパキとこなして、お冷やのおかわりを注ぎ、ラジを打ち、ラーメンを持って行って、注文を聞いていた。

ほぼ満席だった。

私は美味しいラーメンを、食べながら気づいたことがあった。

この人数のお客さんを一人でみていながら、私が来店してから、彼はお客さんから「すみません」と一回も呼ばれていないのだ。

お客さんが彼をを呼ぶ前に、彼が先に全て行動していたのだ。

さりげなく彼を観察してみると、あちこち動きまわりながら、ニワトリの、ように首をキョロキョロと動かしている。

きっと彼の頭の中で、20人弱の人たちが今何をしているのか、咄嗟に把握して効率よくサービスを提供しているのだろう。

ちょっとマネできるレベルではない。

私が食べ終わって立ち上がると彼はすぐにレジに入って私を待った。

「ありがとうございます」

「御馳走さま、美味しかったよ!そして君の接客の仕方が、同じサービス業として勉強になったよ、ありがとう」

「いえいえいえ、そんな」

「どうも、御馳走でした」

と厨房の店主らしき人と彼に向かって挨拶をして帰った。

後日彼が私の店に来店した時に、その時の話をして、ふたりで盛り上がった。

「もし自分がお客さんだったら……」

彼はこの言葉を何度も何度も使っていた。