大学生のバイトの話です。
彼から新聞屋でバイトしてると聞いたとき、配達の仕事をするようなタイプに見えなかったので少し驚いた。夜中からの仕事大変ではないかと尋ねると配達の仕事ではないという。
新聞紙を配る以外の新聞屋のバイトなんて知らなかった。
彼は新聞紙を購読しているお客様に対して、継続のお願をする営業のバイトだった。
前日までに連絡があり、今日は何処どこの地域だから、なになに駅に10時に集合する。そこで、お客様のリストを渡されて各々営業に回ると言うことだった。
そんなんで稼げるのか疑問に思ったが、彼は結構稼げます。先月は1ヶ月で50万円くらい稼いだ、と聞いた時には心底驚いた。
興味津々になった私は色々と質問した。
新聞紙継続のバイトは歩合制で誰でも稼げる訳ではなかった。
日当で1万円を超える人はごく僅かで、ほとんどの人には割りに合わない仕事みたいだ。その中で驚異的な数字は某新聞社の継続のバイトで全国一位の収入だったと言う。
彼からその理由を詳しく聞かせてもらった。
普通のアルバイトの人は1日に4〜50軒も回って、
2〜3件契約が取れればマシみたいだ。
彼は1日平均8〜10件契約を取った。
件数によって時給が変動するシステムらしく、彼の時給は3000円近くまで上がり日当で2万円を越していたらしい。17日間の勤務で50万円稼いでしまったのだ。
彼は1日で訪問した件数は20軒に満たないという。他のバイトの半分だ。それでどうして倍以上契約できるのだろうか?
彼は営業で訪問した先でドアを叩き、対面した相手が、学生で若くても、高齢者でも、どんな人とでも、とにかく長く話すことを一番考えていた。
初対面の相手に対して、名を名乗り、そこから話し込むには、初見の印象から察する会話のネタがとても重要だという。
表情、容姿、服装、玄関の清潔感、靴の種類からの家族構成など、色々な情報を入手して即座に会話を膨らませていく。関西人のコミニュケーションの巧さもあり、絶妙な距離感を感じながら徐々に懐に入っていくのだ。
気がつけばいつも30分くらいは話し込んでしまうらしい。
30分も話すのは簡単なことではないはずだ。
頃合いを見計らい、結論へ向かう
「すいません、ついつい調子に乗って長話してしまって、お兄さん(お父さん)めちゃくちゃ喋りやすかったので関係ない話しばっかりしてしまって。今日の目的すっかり忘れてました。本日は、今契約していただいてる新聞の契約の継続のお願いにあがってたのでした。ほんま、時間とらせてすみませんでした。継続いかがですか?」
と、このような感じで営業しているのだ。
彼が言うには、話をしている時間が長ければ長いほど、契約してもらえる確率はあがる。
そして継続の延長期間が、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年とあるのだが、長いほどインセンティブがつくらしい。彼の契約のほとんどが半年や1年間という長期契約を結ぶのだと。
なるほど、大したものだ。
普通の考えだと数打ち当たると思って、1日に何軒回れるかと、その数字に躍起になってしまいそうだが、彼は量より質が性に合って、それが、お客様の契約に繋がっていったのだ。
彼の話を聞いて思った。
全ての人にこのやり方が合うかというとそうではないかもしれない。自分がお客様の立場ならどのような状況や状態の時に、継続の契約を結ぶのか、そこまで考えて建てた彼なりの自分らしい戦略なのだろう。流石だ。
彼は大学を卒業して20年経ち、現在はスポーツ界に新しいムーブメントを吹き込む活動とビジネスを行なっている。それも、やはり相手の事、それに携わる人達、スポーツの可能性と未来を考えている。彼はいつも思考している。誰の為に何ができるのか。彼の今後の活躍が楽しみです。